~日々のしまだより~
養生訓二十~四十
21 元気をたもつ法
元気でいるためには、体によくない状況をなくすことと、体を強く保つための心がけをわすれないことであろう。
水田を耕すには、雑草を取り除き肥料をやれば、うまくいく。元気でいる方法も、水田を耕す方法も、同じものである。
22 人生の三楽
人として生まれたならば、三つの楽しみを知らないのは悲しいことである。一つはいい行いをして自尊心を高める。二つは健康で心配事がないこと。三つ目は長生きをして、人生を十分に楽しむことである。この三つを行うには、養生の教えをよく守ることである。たとえ、お金持ちであっても、後ろめたい気持ちをもっていたり、病気がちであったり、短命な人生であるのなら、この三つの楽しみは得られない。
23 人命の貴さ
宇宙に寿命があるならば、それは人と比べればはるかに長いであろう。人の寿命とは、宇宙の寿命に比べればはるかに短いものだ。その短い寿命を、さらにその人が養生の道を行わず寿命を縮める行為をするのはおろかなことだ。
個人的には、宇宙には寿命などないと思っている。あらゆる宇宙がその存在を変えながら永遠の昔から存在し、永遠の未来を持っていると思っている。
24 勤勉即養生の術
健康にいるためには、適度な運動が必要である。長く座っていたり、寝ることを好む人などは健康をたもつには適していない。食後の散歩は、食べたものを消化させるために、血行をよくめぐらすために必要である。食事のあと、すぐに寝ると言う行為はこのことからもよくないことである。逆にいえば、肥満防止になるかもしれないが、それは肥満になるような生活事態がよくない。
適度な運動を行うことは、すなわち働くことも意味し、勤勉に働くこと自体、健康法なのである。神様でさえ働いているのだから、人も勤勉でなければいいけない。
26 家業の中の養生
いつも仕事で忙しい人などは、養生のすべを行うことができないという、誤った考えを持っている人もいるだろう。しかし、いつも働いている人よりも、なにもせずに暮らしている人のほうが、健康にはよくない。流木は腐らないし、いつも動いている扉の蝶番は長持ちする。それゆえに、人はいつも働いているほうが、いいといえる。これも養生のひとつである。
27 常と変と養生と
いつも自分の体の健康のことばかり考えていると、いざ必要なときに力を発揮できないことがある。体によくないといって急ぎの仕事を片付けるために残業を断ることは、まわりに迷惑をかける。状況によって、どうするかを考えるのも必要なことである。夏は薄着をするし冬は厚着をするように、臨機応変な行動も必要である。
危急のような場合に力を発揮できるように、常日頃、健康に心を配っておく必要がある。
28 睡眠と養生
意外と知られていないのが、睡眠を長くとるのはよくないことだ。睡眠を長くとると、元気を奪われてしまうのだ。睡眠を短くするのはつらいことであるが、努力して睡眠時間を短くすれば、習慣となるであろう。
29 養生と口数
口数が多いのはよくない。多いと、気をつかいすぎるからである。言葉を慎むのも養生のすべである。
30 少しの不養生と病気
たとえささいなことでも、体によくないことをするのはよくない。ささいなことであっても、それが原因で大病を引き起こすこともあるからだ。たとえば、小さな火であっても大きな火災のもとになるようなものだ。だから常日頃から、ささいなことにまで気をつかうことを忘れてはいけない。
31 天寿の全うは養生から
生まれつき健康な人でも不健康な生活をすれば、早死にする。逆に体が弱い人でも、健康に気をつけながら生活をしていれば長生きできる。
白楽天の言葉に、「福と禍とは、慎むと慎まざるにあり」とあるが、その通りであろう。
32 富貴財禄と健康長生との違い
財産を持てる人は、運がいい人であろう。でも、運がいいといっても健康をもてるとは限らない。健康は自分が努力しなければ得られないからだ。財産を得た運のいい人であっても、短命で終るというのははたして運がいいといえるのだろうか。
33 血気の流通は健康のもと
四季は移り変わるゆえに、一定の秩序がある。秩序が崩れれば、冬は暖かく夏は寒く、大雨大風など天変地異が起こる。
人の身も同じで、常に血気を流通させることで健康は保たれる。
34 心と主体性
自分の信じる基準を持つことが大事である。信念ともいえるかも知れないが、それがあれば善悪の基準を決めることができるため、悪いことをしないようになる。そうすれば、体によくないこともしないであろう。
35 我慢と養生
酒を飲むと気がよくなる。しかし後日、健康を壊すおそれがある。酒をのまずその快感を我慢すれば、後日の憂いがないのも確かである。
36 予防と養生
病気になってから治療するのは、大変つらいことである。賢いひとならば、病気にならないように努力するほうが、病気を治療するよりも楽であることを知っている。
すばらしい将軍とは、「戦わずして戦いを勝つ」ということであろう。
37 気ままをおさえる
若いときは力があるので、それを過信すれば病気になってしまう。それゆえに年齢に関係なく、健康には気をくばるべきである。
38 欲を少なくすること
古代の人たちは、欲を持ちすぎると体によくないと言っている。欲を満たすために無理をするというのは、健康にとってはとてもよくないことであるからだ。
39 とどこおりと病気
いつも、気は体全体に満たしていないといけない。胸にだけしまいこむことはよくない。怒り・悲しみ・憂い・思いなどは胸にこもりやすいものだから、そういうことのならないようにいつも心がけることが大事である。
40 偏しないことが養生法
義と理とはともに大事なものである。義ばかりに偏ると、理を無視してしまうし、義ばかりに偏ると理を無視してしまう。義とは、人情のようなものであるし、理とは物事の仕組みのようなものである。物事の仕組みばかりを大事にすると人を傷つけるし、人の情ばかりに気を向けると社会の秩序を乱してしまうことがあるということだ。
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